📒ゆるい自然農|《準備編》④専用防虫ネットを作る

自然の力を活かして野菜を育てる「自然農」に挑戦していると、多くの方が直面するのが「害虫による食害」ではないでしょうか。農薬を使わずに野菜本来の力や生態系のバランスで育てたいと思っても、現実は厳しく、植えたばかりの苗があっという間に食べ尽くされてしまうことも少なくありません。

私自身、「農薬は使いたくないけれど、苗が育つ前の全滅だけは防ぎたい」という強い思いから試行錯誤を重ね、最終的に畝全体をすっぽり覆うオリジナルの「専用防虫ネット」を自作して設置するようになりました。この記事では、天敵頼みから防虫ネット導入へ至った経緯、作業性を飛躍的に高める自作ネットの仕組みやメリット、そして実際の作り方までを詳しくご紹介します。同じように自然農での虫対策に悩む方のヒントになれば嬉しいです。

目次

なぜ防虫ネットが必要だったのか

自然農を始めた当初、私は「自然に任せていれば害虫が増えても天敵が現れ、大発生は防げるはずだ」と思い込んでいました。生態系の調和によって自然とバランスが保たれるという、自然農の理想的な世界を思い描いていたのです。

しかし、実際の畑は甘くありませんでした。「天敵さん、頼むよ!」という私の願いも虚しく、苗を定植した翌日には激しい食害に遭い、あっという間に全滅してしまうという苦い経験を何度も味わいました。私が借りている市民農園という環境では、周囲で農薬が使われることもあって天敵が増えにくく、仮に天敵がいたとしても周りの畑から次々と害虫が飛来してくる状況では、天敵頼みだけで苗を守ることは不可能に近いのが現実でした。

それでも「無農薬で育てたい」という気持ちに変わりはありませんでした。そこで、天敵のいない害虫天国になるリスクがありますが、物理的に虫を遮断できる「防虫ネット作戦」へ舵を切ることにしたのです。

市販のトンネル支柱から「畝全体を覆う常設ネット」への進化

防虫ネットを使い始めた当初は、定番のトンネル支柱にネットを被せてクリップで留める一般的なスタイルをとっていました。しかし、野菜の世話をするたびにいくつものクリップを外して付け直す作業が非常に億劫になってしまいました。さらに野菜が生長するとネットの天井にすぐ突き当たってしまい、ネットを外すと待っていたかのようにウリハムシなどの総攻撃を受け、葉っぱをボロボロにされてしまったのです。

そこで、「畝全体を囲い、収穫までずっと掛けっぱなしにできる大型の専用防虫ネットを作ろう」と考えました。特に工夫したのが日々の作業性です。ネットの裾をのれんのように垂らし、長めにとった裾の先端を丸めて洗濯ばさみで留める構造にしました。洗濯ばさみが適度な重石の役割を果たし、バタつきを防いでくれます。

草整理や草マルチの設置、下葉欠きなどを行う際は、支柱に固定している下側のクリップを外してネットの中に潜り込むだけで、簡単に作業ができます。これは、一般的なトンネル式の防虫ネットに比べて格段に作業性が良いです。また、開口部を最小限に抑えたまま作業できるため、作業中に虫が飛び込んでくるリスクも大幅に減らすことができました。

防虫ネット導入の劇的な効果と「一石二鳥」の副産物

この専用防虫ネットを導入してからは、苗から大きく育つまでほとんど手がかからなくなりました。わずかな隙間から100%の侵入を防ぐことは難しくても、80~90%の侵入を阻止できれば十分です。初期の食害から守られた苗は力強く育ち、大きく茂った後であれば数匹の虫による食害など全く問題になりません。

たまに侵入したウリハムシも、見回りの際にネットの外側から挟んで簡単に捕殺できるという思わぬメリットも生まれました。また、ネットで覆うことで虫媒介による受粉が行われないため「人工授粉が必要になる」というデメリットもありますが、実際にやってみると受粉のタイミングで着果確認、草整理、下葉欠き、摘芯、摘果、病気の早期発見などをまとめて行えるため、畑のメンテナンスを一挙にこなす「一石二鳥の仕組み」へと生まれ変わりました。

専用防虫ネットの材料と自作の手順・工夫

ここからは、私が製作した専用防虫ネットの材料と作り方のポイントをご紹介します。一度作ってしまえば何年も使えるため、とても重宝しています。

作り方は、まず、畝のサイズに合わせて縫い代を考慮し、防虫ネットをハンダゴテで溶断します。次に立体的な畝の形状に合わせてミシンで縫い合わせ、専用カバーに仕立てます。設置時はレイズドベッドの四隅の支柱と中央のダンポールにネットを被せ、隙間が出ないようにパッカーで固定したあと、裾を丸めて洗濯ばさみで留めれば完成です。

レイズドベッドについては、以前の記事で紹介していますので、興味のある方はこちらもご覧ください。

用意するもの解説
銀糸入り防虫ネット (1.5m×20m)
(¥4,603)
強い繊維のものを使います。安いものはすぐ破れ、耐候性がありません。幅の広いものがないので、ミシンで縫って畝のサイズに合うものを作ります。虫除け用の銀糸入りのものが、ラインが目印になって真っ直ぐにカットできます。縫い代分と余裕を考慮して大きめにカットします。
ミシン糸 30番 200m巻(¥736)
+ ミシン
縫製用。材質はポリエステル。耐候性が少し心配ですが、今のところ問題なく使えています。ミシンの使い方は、この機会に覚えましょう。案外簡単にできて、試しにやってみるものだと実感しました。(笑)
USBハンダゴテ (¥1,618)
+ モバイルバッテリー
はさみで防虫ネットを裁断すると、切った端から、網目がほつれるので、ハンダゴテの熱で溶断します。手持ちのモバイルバッテリーがあれば、圃場でも使えるのでとても便利です。
φ16mm用簡単パッカー 50個
(¥1,270)
φ5.5mm用トンネルパッカー 50個
(¥1,080)
φ16:防虫ネットを畝の四隅にある支柱に固定します。
φ5.5:防虫ネットをダンポールに固定します。
 ダンポール (¥1,380)
(φ5.5, 長さ2100mm ✕ 10本 )
畝の中央部にしならせて設置し、防虫ネットが垂れ下がるのを防ぎます。
洗濯ばさみ (¥110)
耐候性のあるポリカーボネート製を選びます。100円ショップのもので大丈夫です。

防虫ネットは下図のようにカットし、ネットを重ねた端が内側になるよう縫製します。

防虫ネットの設置イメージ

自然の力とちょっとした工夫で、無理のない菜園ライフを

「農薬を使わずに野菜を育てたいけれど、虫に負けてしまう……」という悩みは、自然農に挑戦する誰もが通る道だと思います。すべてを自然任せにしてストレスを抱えるのではなく、必要な道具やアイデアを柔軟に取り入れながら、畑と心地よい距離感で付き合っていくことが何より大切だと実感しています。

もちろん、すべての野菜に防虫ネットが必要なわけではありません。虫に強い野菜や時期を見極めつつ、「どうしても食害を避けたい初期段階や特定の野菜」に絞って活用するだけでも十分効果的です。この記事が、同じように虫対策で試行錯誤されている皆さんの参考になり、豊かな収穫につながるきっかけになれば幸いです。

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